キリスト教一致祈祷週間最終日の前日(1月24日)午後7時から、マラナ・タ教会主催の「メサイア」が枚方教会聖堂で開催された。
通常「メサイア」は、大編成のオーケストラと200人を超える合唱団で大きなコンサートホールで演奏される。
ベートーベン「第九」と共に年末のクラシック界2大イベントとなっている。
今回はかなりの小編成で、久下牧師によれば「素人の合唱グループ」とのこと、また会場も音楽会にふさわしい場所ではないのかと危惧していた。
しかし本来、メサイア誕生の秘話としては、慈善や慰安のために小編成での合奏合唱が行われたようで、この演奏会はその精神に合致していると合点した。
そしてM・Y氏の指導のもと、半年以上かけられた熱心な練習と、団員がワンチームとなって培われた成果が爆発したような一夜となった。
演奏に先立ち久下牧師が挨拶、プロテスタントの信者や音楽愛好家だけでなく、多くの人が集まり「受肉」「受難」「復活」の聖書の世界を共に賛美することが出来、これこそエキュメニカルの精神であると話され、カトリック枚方教会にも謝意を表されたのが印象的であった。
最初の序曲は、先述の三つのテーマに相応しい喜びと悲しみ、開放を表した複雑な演奏で始まり、テナーの独唱でイザヤ書が歌われ、合唱で主の栄光が現わされる。
私は過去にも「メサイア」に接したが、こんなに身近なところで聞いたことがなく、歌声が心に飛び込んで来るようであった。
続いてバス、アルト、合唱と神を賛美する良い知らせが続き、闇の中を歩いていた人々が一人の幼な子が生まれた喜びを表した。
中間ではPifaという美しい田園曲が挿入され、ソプラノで神の小羊、天使の歌声、Grolierが歌われた。
有名なRejoicegreatly(大いに喜べ)は誰が聞いても嬉しくなる曲だ。
ここで前半が終わり、休憩。
後半は、イエスが、初めは良いが人々の反感を受け受難の道を歩み、ついには十字架に架けられるという筋道。
Liftupyourheads(こうべを挙げよ)の後、あの有名なHalleluja(ハレルヤ)が歌われるが、これはヨハネの黙示録による第七の天使がラッパを吹く、雷も鳴るという、トランペットや太鼓の大合奏となる見せ場だ。
トランペットの見せ場では、バスの独唱で死者のうちから復活するという暗示で力強い演奏が見られた。
しかし私が最も好きなのは「屠られた小羊」という合唱で、「屠られた小羊は、力、富、知恵、威力、誉、栄光、そして賛美を受けるにふさわしい方」という所だ。
演奏も合唱も終盤になって伸びやかになり、嬉しさが込みあげて来るようだった。
最後はAmen(アーメン)、四部合唱のハーモニーも美しくエンディングとなる。
全曲演奏は2時間半に及ぶ大曲だが、時間の制約もあり、苦しむ場面を集約し、密度の高い部分を選りすぐられた演奏だった。
後で聞いた話だが、フラデラ神父は50年前の来日当時にフェスティバルホールでこの曲を聴き、日本の聴衆の態度の良さに敬意を表したと言われた。
ヘンデルがこの曲を24日間で書き上げたというのも驚きである。
本来、復活祭前後に演奏される曲なのだが、季節を問わず何回でも演奏されることを私は望みたい。