郷愁 平戸市紐差教会
マリア M・T

近所の友人と田んぼや野草を見ながら山合の砂利道を歩いて学校に通い、キリシタン墓地の下では墓に向かって一礼。

墓の木陰から優しい祖母が覗いている様な気がしました。

学校帰り教会に寄って、広い教会の中でひざまずいて、めでたしせいちょう…天にまします…と祈り、時には告解をして、家に帰りました。 

あの頃から故郷を離れて70年余り、大阪に来て61年、喜びにつけ、悲しみにつけ、何十回帰省した事か。

その度、2人の子供も、それぞれの思いを抱いて大人になり、家庭を持ち、私は、ついに、おばあちゃんになってしまいました。私の故郷は長崎県平戸市の中央部、教会はカトリック紐差教会。

盆地の小高い丘の上に気高くそびえたち、町を見下ろす大天主堂は東洋一と言われた時もありました。

紐差教会出身の神父や修道士、修道女は今も昔も大勢。

その中でも松永大司教、糸永大司教は有名で、紐差教会の誇りです。

他に院長、校長等も。

学校も近くにあり、図画の時間には、ほとんどの生徒が聖堂を写生したものです。

町一番の高い建物は四方八方からよく見えて、私の生家の庭先からも遠くに見えて、新緑におおわれた聖堂は、一段と映えたち、美しい姿でした。

庭には四季折々の花が色とりどり咲いて、ごミサが終わると、広い庭でそれぞれ語り合ったものです。

ところが今は、あの広い庭は駐車場、田んぼに行くのも車、楽しかった総出の田植も機械、砂利道もきれいに舗装され、時代は変わってしまいました。

生家も甥の時代に…。でも、父や兄がしてくれた様に、新米ができたから、お正月だから、お盆だからと、米を送ってくれる甥がいます。

誠に有難くうれしいことです。

故郷は、なつかしく、いつになっても忘れられません。


◎紐差教会について

紐差教会は今年5月末、枚方教会からは7名が、長崎神父との巡礼の旅の2日目に訪れた所です。参加された中から、お2人にその印象を語っていただきました。

教会は白くて美しく、その大きさには圧倒されました。

聖堂内では赤い絨毯、白いアーチ式の柱、美しいステンドグラスが印象的で、お庭にはファティマのマリアさま、階段下にはルルドがありました。

このときだけ、とにかく雨が強く、うまく写真が撮れなかったのが残念です。(M)



紐差教会は、ミサに参加される人々の、神との喜びに溢れた足跡が刻まれたと感じさせる緩やかな階段を上ると、聖堂入口となっています。

神父、シスターの召命が一番多い教会と話されたシスターの笑顔に、巡礼者は癒されることでしょう。

巡礼当日は涙雨が降り注ぎ、白亜の教会前での集合写真が撮れなかったことが心残りですが、また巡礼したいと思わせる教会です。(S)