隠遁者の知恵にふれて 主任司祭 ハイメ・シスネロス

初代教会の「信仰に生きる」 具体的な形を示した聖書の言葉があります。『信者たちは皆一つになって、すべての物を共有し、財産や持ち物を売り、おのおのの必要に応じて、皆がそれを分け合った。そして、毎日ひたすら心を一つにして神殿に参り、家ごとに集まってパンを裂き、喜びと真心を持って一緒に食事をし、神を賛美していたので、民衆全体から好意を寄せられた。こうして、主は救われる人々を日々仲間に加え一つにされたのである。』(使徒言行録2:44ー47)。

大きな目標をたて、人々に影響を及ぼす福音宣教をする教会像の魅力が感じられます。福音書にも同じ招きが載せられています。それは「キリストに学び、キリストに従う」ことを通して、神の国の訪れに不可欠な部分です。その狙いに近づくときに、世代ごとに置かれている状況が変わり、それに相応しい形を探す必要があります。そのため聖霊の導きを祈らなければなりません。そうすると、この世に居てキリスト者らしさを目指す具体的な霊性も生まれて来ました。例えば、東では聖バシリオとパコミオ、西では聖ベネティクトの霊性に基づいて、修道生活と隠遁生活が始まりました。聖アントニオ修道院長は代表的な人物です。修道院生活の父と呼ばれるほどです。

教会はローマ皇帝コンスタンティヌスによってキリスト教が歓迎され、平和な時代(311年)を迎えました。それに伴い、グループや隠遁者が砂漠に退いて、特にエジプトとパレスチナでその運動が盛んになりました。

『荒れ野の教父』の書物を読んで、私が感銘を受けた一部を紹介します。四旬節の精神を高めるために参考にしていただければ幸いです。聖アントニオ修道院長の記念日は1月17日です。書物には、『アッバアントニオ』と呼ばれていました。

1.ある人がアッバアントニオに尋ねました。神に喜んでいただくためどうすれば良いでしょうか。アッバアントニオが答えた。『どこへ行っても、目の前に神の存在を置くようにする。また、何かをする時には、聖書からヒントを学ぶ。あなたの住居(居場所)を長く使用する。わたしがあなたに提案するこの3点を守るなら、救われる』。

2.『生きること・死ぬことは隣人によって決められる。兄弟を得れば、神を得るし、兄弟に躓きを与えれば、キリストに背く』。

3.ある人が『わたしのために祈って下さい』と願ったとき、彼は『あなた自身が努力をして願うなら神の憐れみが得られ、わたしの祈りが適えられます』と答えました。

4.アッバアントニオの信仰告白。『わたしは神を恐れない。神を愛する。愛は恐れに打ち勝つ』。