もう十数年前のことであるが、ある有名ラーメン店を取材した番組を見た。小さな店内は開店と同時にすぐに客でいっぱいとなり、順番を待っている客が店の外に並べられている椅子に座っている。皆が無言でうつむいている姿はこれからおいしい物を食べるのを楽しみに待つ姿には見えない。小さな子どもや香水がきつい人の入店はお断り。さらに雑誌や新聞を読みながら食べているとラーメンの「道」を究めたとされる 『こだわり』の強い店主の非常に厳しい視線が客に注がれ、客は否が応でも食べることに集中させられる。
食いしん坊の自分は道を究めた名人の味を一度試してみたいと思う一方、 狭量とも思えるその名人の『こだわり』に複雑な思いを抱いたまま、ついぞその店を訪れることはなかった。 “こだわり 長崎 壮神父” の続きを読む